Special Edition

「郁さん」
「ん?」
「結納のお返し、何がいいですか?」
「別に要らないよ」
「私だってあんなに沢山要らなかったですから、郁さんも」
「………」

相場だと、頂いた結納金の1割程度を返すものだけど、あの額だもん。
返すのも一苦労しそうだ。

「車にします?それとも、時計とか?」

時計といっても超高級時計になりそうだけど。

「任せる」
「はい、お任せあれ」
「フッ」

暫し夜景を楽しんでいると、突如思い出したかのように彼が口を開いた。

「彩葉、住む家なんだけど」
「はい」
「今住んでるマンションのもう少し上の階に引っ越すことになるから」
「え?」
「何かと入用になるだろうから、先に部屋数増やしといた方がいいかと思って」
「まさかとは思うんですけど……」
「ん?」
「ワンフロアとか言いませんよね?」
「お、よく分かったじゃん」
「………」

いやぁぁあああああぁぁぁっ!!
どうしてそうなるかな~!!
今のままのでも十分でしょ!!
使ってない部屋3部屋くらいあるじゃない!!

「数階上に上がるだけだから」
「郁さんの部屋の上にはあと3階しかないですよね?」
「そうだったか……?」

完全にしらばっくれてるよ。
エレベーターの階数表示見たら一目瞭然でしょ!

「家具は殆ど備え付けだし、ウォークインクローゼットもあるから、家具は要らないかも。来週あたりに必要なものがあるか、一緒に見に行こう、な?」
「………はい」

私、庶民なのに……やっていけるだろうか?

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