Special Edition

景福宮(キョンボックン)(王宮)を出て、南下する。
お忍びで温陽するため、輿にも駕籠にも乗らず、数人の護衛と尚宮のみを連れての移動だが、男装姿のソウォンはヘスと共に馬で王宮を出発した。

忠清南道(チュンチョンナムド)牙山(アサン)にある温陽地に先に向かったヘスとソウォン、それと護衛のヒョクと尚宮のチョンアは、若芽が生える木々を楽しむように山道をゆっくりと進む。
従者たちより一日遅く王宮を出て、違う山道を通り、回り道をして久しぶりの遊山を楽しむ。

ヘスとソウォンとの距離を保ちつつ、周りを警戒しながら後を追うヒョクは、幸せそうな笑みを浮かべるヘスを見て安心する。
最近、王妃や大妃からの催促が頻繁で、ヘスの笑顔を久しく見てなかったからだ。

「嬪宮様の嬉しそうな笑顔、久しぶりに見ました」
「私もです。世子様もずっとこの所暗いお顔つきでしたから」

チョンアも同じことを思っていたようだ。
お互いに顔を見合わせて笑みが零れた。

「以前、上党山城(サンダンサンソン)清州(チョンジュ)の郊外にある山城)で鍼治療したことがありましたよね?」
「……はい、解毒をした時のことですよね?」
「解毒とは違うのかもしれませんが、ご懐妊し易いように鍼を打つことも可能でしょうか?」
「それは、嬪宮様に?それとも、世子様に?」
「出来れば、両方に」
「可能は可能です。血の巡りが悪いのであれば、流れを良くする鍼を打つとか。冷えが原因なのであれば、陽の気を補う鍼を打つとか。何をするかにもよりますけど」
「では、到着したら早速お願い出来ますか?世子様からの依頼なのですが、嬪宮様には温陽の効果を高めるということにして頂き……」
「承知しました」

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