理由なんてない
真は優しく、でも刹那気な微笑みを私に返した。
そして、席を立った。
なっ、なによ?
私は身構えた。
「………!?」
真は自分が制服の上に着ていたコートを、私の肩にかけた。
ビックリした……。
どうしたのかな?
別にカフェの中は暖房もきいていて、そこまで寒くないんだけど。
……あっ。
もしかして、発作でたおれたって言うのを聞いて、心配してくれたのかな?
そう思うと、真は悪い奴じゃないのかもしれない。
真は私を抱きかかえた。
…………前言撤回。
こいつはやっぱり、悪い奴。
はぁ!?
なんで抱きかかえんのよ!?
これは世に言う、お姫様抱っこと言うやつだわ。
この平成で、そんなことをする奴もいるのね。
まぁ、そんなことはどーでもいいわ。
「ちょっと!!おろしなさいよ!?」
他のお客にはジロジロと見られてるし。
恥ずかしいのよ。
私はキーキーと、議論した。
でも、うるさかったのか、真は私の後頭部をおさえて、私を黙らせた。
真の肩に顔をうずめながらも、必死で真の胸をドンドンと叩いた。
そんな私の抵抗も虚しく、真はそのままの状態で、カフェをあとにした。
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