エナメルの楕円形




私達の他には誰もいない、ランチタイムの小さなオフィスフロアーに、ツン、としたマニキュア独特の匂いが漂う。

友里の細い指が動くリズムに合わせて、つるんとした私の楕円形が、キラキラのラメ混じりのピンク色に染まっていく。


「うふふ。ほうらね、やっぱり似合う」


そう言う友里の、透ける様に白い首筋には、細いピンクゴールドのチェーン。
私は右手の指先を友里に捕らわれたまま、そこから視線を動かさずに、
「……プレゼント?」
と何気なく、尋ねてみる。


「あっ、ネックレス? うふふ、そうなの。わかる?」


俯いたまま、長い睫毛を嬉しそうに揺らす。

……わかるよ。
だって今日の友里は、朝から機嫌がよかったもの。
仕事中だってパソコン画面の前で、そのチェーンを時々指先で弄んでいた。


「……優しい旦那さんだね」


私はそう、呟いてみる。
声が上擦らないように。


「えへへ。……亮ちゃんね、友里にはピンク色が一番似合うねって、いつも言うんだよ」


悪気のないのろけ話。
友里の一番得意な悪戯。


「……うん。私も、そう思う」


悪気のない笑顔と嘘。
私の一番得意な悪戯。




< 2 / 5 >

この作品をシェア

pagetop