これからは…
一転不機嫌になった声に微笑みながら

「おやすみ。日短くなったから気をつけろよ」

「うん。おやすみ、海斗。くれぐれも変な女の人について行っちゃだめだよ」

誰がついて行くか、お前こそ戸締りちゃんとしろよ

そう言って切れた電話

瞬間、覚える寂しさは、海斗も同じだろうか

テーブルの上に携帯を置いて紅茶を口に含む

…ぬるい

湯気の立っていた紅茶はすっかり冷めてしまって、いい加減すら通り越してしまっている

それでも自然と笑みが漏れるのは、あの声を聞けたから

2か月前に玄関先で頭に乗せられたあの手が

気づかないところで心配していてくれたのだと知れたから

そっと抜き取ったシルバーリングを、ガラスの靴型のリングピローに戻す

指先で優しくなでた輪郭が、照明を反射してきらりと光った



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