もっと美味しい時間  

あぁ~、あの目を思い出しただけで、身体が熱くなってくる。
それもこれも、今、目の前でいい気に眠っている慶太郎さんが悪いんだ。
どうしようもなく疼く身体を持て余していると、寝ているはずの慶太郎さんの口が動いた。

「朝っぱらから、何、発情してるの?」

「は、発情なんてっ……」

してるのか? いやいや、してないっしてないっ!!
と言うか、慶太郎さん起きてたのっ!?
言葉を発してから少しも動かない慶太郎さんを見ていると、いきなりパチッと目を開けた。
ビクッと身体が跳ねてしまう。

「可愛い反応だなぁ。朝から食べたくなる」

手も足も使って、私を抱き寄せた。

「バ、バカなこと言わないでよ。恥ずかしい……」

「恥ずかしいとか言って、さっきひとりで悶えてたくせに」

「悶えてないっ。慶太郎さんこそ、タヌキ寝入りなんてヒドいっ!」

反省する素振りも見せないで私の髪を梳いて弄ぶと、二人の空間に甘い香りが漂いはじめた。
私が好きな仕草をよく知っている、慶太郎さんお得意の戦法と言ったところか……。
髪を梳いていた指が首筋を伝い、胸まで下りてくる。
その淫らな指先に、思考が奪われそうになってしまう。

「百花……」

慶太郎さんの甘い声に、溺れそうになった。……と、その時っ!

『ピピピッピピピッ……』

セットしてあった携帯のアラームが、部屋中に響き渡る。
と同時に、私の意識が覚醒した。





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