もっと美味しい時間  

「子供みたいだな」

「はいはい。もう何とでも言って。でもこんな美味しい料理を食べさせてくれて、慶太郎さんには感謝しなくちゃね」

「感謝か……。これで感謝してたら、百花は一生、俺に感謝し続けないといけないだろうなぁ」

「それって、どういう意味?」

「二人っきりになったら、教えてやるよ」

ドキンッ!!
またまた妖艶に笑う顔に胸の鼓動が高鳴ると、目線を逸らし食べることに集中しようとした。でもそれは無理なことで……。

危ない危ない!  あの笑顔に私は弱いんだった。
あの顔を見ると、ところ構わず身体が疼く。
完璧に私は、心も身体も慶太郎さんに染められてしまったみたいだ。
自分がこんなふうになってしまうなんて……。
もう慶太郎さんなしでは、生きていけそうもない。
胸がいっぱいになってしまい、これ以上は食べられないかもしれない……そう思っていたところに、目にも鮮やかな色をしたお肉が目の前にお目見えした。

「特選神戸牛のシャトーブリアンでございます」

えぇっ!! シャトーブリアン!?
それって、一頭の牛から数グラムしか取れない究極の希少部位と言われている、あのシャトーブリアン?
私の口に入ることは一生ないと思っていただけに、いきなりその肉を目の前にすると背筋がシャンと伸びた。

料理と食べることが好きな私は、その知識を高めるために食に関する本も時々読んでいる。
シャトーブリアンと言えば、ヒレの特徴である柔らかさやキメの細やかさが、一段と高まる部位らしい。
想像もつかないその味を足りない頭で考えていると、ジューッと派手な音を立ててその肉が焼かれ始めた。

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