【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
おかしな感覚だった。
紀之さんに怒りをぶつけた自分も、冷静に話している自分も、まるで別人のようだった。
淡々と会話を続ける自分を、テレビの画面に映し出されるドラマを観るように静観しているもう一人の自分がいる。
「あなたじゃないなら、いったい誰が…」
紀之さんは暫く考え込んでいたが何か思い当たったらしく、ハッとして顔を上げた。
「…もしかしたら…いや、それなら辻褄が合う。…だが」
「だが何? いったい誰が香織をっ?」
「廉、俺がどうしてあの部屋に彼女がいる事を知っていたと思う?」
誰かが春日に情報を流していた。
あの日、香織がホテルへ行くことを知っていた人物。
あの部屋を知っている人物。
一人しか思い浮かばなかった…
「……春日筋の情報って…まさか…そんなこと」
紀之さんは哀れむような視線で僕を見ると黙って頷いた。
「俺にあの部屋を教えたのは…安田だよ」