【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
俺にあの部屋を教えたのは…安田だよ
紀之さんの言葉に、部屋がグニャリと揺らいだ気がした。
運転手兼ボディガードの彼は、物心付いたときには僕の傍にいて、両親も全幅の信頼を置いていた。
不在がちな父の代わりに、時には相談に乗り、色々な面でサポートしてくれた存在だった。
香織のこともいつだって応援して、アドバイスをくれたのに…
「嘘だ!だって、あの人は僕が子供の頃からこの家に…」
「もともと安田は春日の命(めい)で雪さんが再び失踪しないよう見張るために浅井家に送り込まれたんだ。
彼女は昔、結婚を嫌って逃げた事があるらしいな」
「安田さんは香織を護って怪我をしたんだ。ありえない」
「怪我を負いながらも助けようとした安田を誰が疑う?
疑いを逸らす為に最初から死なない程度の傷を負わせる計画だったんじゃないか?」
「まさか! 出血が酷くて下手したら死ぬところだったんだ。あれが演技だったっていうのか?」
「思いがけない邪魔が入って怪我だけでは誤魔化せないと考えたかもしれない。
関係者以外通ることの無いあの道に助けが来るなんて想定外だっただろうしな」