神名くん



そのようなことを思考していたためでしょう、私は半分ボーっとしていたのです。あまり考えずに廊下を歩いていたので目の端に移ったものには驚愕を覚えるものでした。お昼に見たふよふよとした光の物体は淡い緑色を発色して浮いているのですから。私は、そちらに目を向けるとその淡い光の物体も一時停止したかのように留まったのでまるで向き合っているかのような構図となりました。



そして、何故かこの時あの、慎一の言葉が頭をよぎったのです。



『今、久水先生の魂がそこらへんを彷徨って入れる器を探している。気をつけろよ。』



私は心霊現象というものを致し方信じている方で、お化けや妖精、妖といった類は実在すると思っています。サンタクロースだって本当はいて、見せることがないと思っているほどですから。今となっては父がサンタなのだとは分かっていますが、本人はフィンランドでゆったりとしているのでしょう。



そして、信じているのですが見たことなど一度もありませんでした。今の今まで。この浮遊物体がお化けだとかそのような類であったならば多分私は驚いたのでしょう。ですが、これがもし久水先生であったならばそれが驚く要素とはなりえなかったのです。何故なのかは分かりませんでした。ただ、これが久水先生っと思うだけでどうしてだか、妙に人間が脆く小さくそのようなものに見えて致し方なかったのです。そっと、手を伸ばすとその物体は身を引くかのように少し下がったので、私めも手をひいたのです。



どうしたらいいかだなんて分かりません。得体のしれないそれをただじっと見つめ、そして、その物体も私を見ているかのようでした。そして、意を決したかのように私はそっと口を開いたのです。



「久水先生…。」



すると、その物体はゆっくりと揺れ、そうだと意思表示をしてくれたかのように思いました。







< 43 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop