スクランブル・ジャックin渋谷
宮益坂通り
隊長が、まだマニュアル本を読んでいる。

 いい加減、隊員たちは指示を待ちくたびれてきた。

隊員A「隊長。俺たちも一緒になって、踊りませんか。こんな仕事なんか、やってられるかい」

隊員たちは、大きくうなずいている。踊りたくて、ウズウズしている。警察の職務など、放棄だ。

隊長は、本を閉じた。両目がショボショボしている。右手で、軽くこすった。

 5万人が相手では、機動隊も警官隊もどうすることもできない。逮捕は無理だ。

下手に手を出せば、死傷者が続出する。それは、許されない。隊長の出世や給料に響く。

 消防車を使用して放水でもするか。しかし、車両は進入できない。他に、妙案は浮かばない。

上空では、テレビ局のヘリコプター5機が旋回をしている。

隊長の後方の路上では、徒歩で駆けつけたテレビ局のカメラマンや新聞社の報道陣たちが、見えた。

人が多すぎて、交差点内に近づくことができないようだ。
報道陣が大勢いる。下手な鎮圧行動はできない。

隊長「踊るかー?」

隊長は、もうやけくそだ。自分の正直な気持ちになれば、「踊りたい」。この気持ちには、勝てなかった。

隊長は、とうとう職務を放棄して軽く下手くそな踊りを披露するのであった。

隊員Aも、隊長を見て踊り始めた。他の隊員たちも、追随して踊り出だした。警官隊も、一緒になって踊りだした。

もう、どうにでもなれ。昇格も昇給も、知らん。人命が優先だ。
今が楽しければ、それでいい。

朝になれば、みんな疲れて帰宅するだろう。それまでの辛抱だ。

今日は、お祭りだ。一晩、みんなで大いに踊り明かそう。
俺が許す。
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