虹になる日がきたら


「気が重いなぁ」


素の自分になった途端に不安の波が押し寄せる。


「…今日だけだから…」


自分に言い聞かせトイレからでて副社長室に向かう途中に秘書課のいつもやっかんでくる人と出くわした。

 
「……」


「口、あいてますよ?」


「あ…貴女…」


「顔崩れてるし化粧下手…秘書失格っていつも思ってました。それじゃぁ急ぎますので失礼します」


お辞儀して通り過ぎた。


見られたけどあの人は言わないはず。
プライドの高い人程、自分が劣ってると嫌だから言わないから。



「お待たせしました」



「すまない」



「副社長が何故謝られるんですか?」



「……」


苦笑いして扉を開けた。





「鞍橋君、佐原は厳しくないか?」


「はい。良くして貰ってます」


「そうか…社長の秘書にいびられてるって…?」


「知ってたんですね…候補が居たのに私を勝手に指名したからです…」


「はははっ、この会社に居ると言ってましたから…まさかの姿だったから驚きました」


又だ。


「佐原さんも、私のこの姿を見たと言ってましたが何処でですか?」


「内緒です?思い出して下さい」


車が静かに停まった。


助手席から降り、後部座席のドアを開けた。


「あ…あのぉ、私は何をしたら「本当に斜め後ろで立ってるだけでいいです」


優しい微笑みに惑わされそうだ。


「行くぞ」


顔が引き締まった。



料亭なんてはじめて…あれっ?料亭ってお座敷よね?立つって変よね?



「あの、お座敷ですよね?」


「あぁ」


??


「行けばわかる」







「ねっ?」



だだっ広い部屋に料亭とは似つかわしくないフローリングに洋風なテーブル


「最近の料亭は時代によって変わるものだよ」


そんなもの?


「高原の若様。お久しぶりで御座います」


から始まり、副社長にあいさつをしてくる重役の方々が居た。


「はははっまだまだ若輩者ですのでご指導ご鞭撻の程宜しくお願いします」



腹のさぐり合いだなっと耳元で言われ身体が固まってしまった。


ヤバイ…こんな時に。


「一寿、新しい秘書か?佐原はどうした?」


「佐原は別に仕事があって、佐原のサポートとして雇い入れました」



「ほぅ…」



看られてるが、副社長に不意を付かれた今、笑う事さえも出来ない。


「?鞍橋君顔色が悪いが大丈夫かい?」



だめです。



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