おやすみ、先輩。また明日

そんな風に皆と楽しみながらも、人ごみの中に背の高い男の人を見つけると、

つい目で追ってしまうわたしは本当にばかだと思う。



「あ、ラムネ飲みたい!」


「わっ! 待って須賀ちゃん! 走っちゃだめだってー!」



下駄で人ごみの中を駆けだす須賀ちゃんにはもう、笑うしかない。


みんなで追いかけようとした時、たこ焼き屋の前でヤンキー先輩っぽいうしろ姿を見つけた。


思わず足がそっちに向いて、声をかけそうになったけれど。

ふり向いた男の人は、ヤンキー先輩とは似ても似つかない大人の人だった。


その人がわたしをいぶかしげに見るから、慌てて誤魔化すようにたこ焼き屋のおじさんに、買うつもりのなかったたこ焼きを注文してしまう。



「はあ……。なにやってんだろ」



たこ焼きの入ったパックを受け取って、皆の所に行こうと振り返ると。


ゆっくり流れる人の波の中に、もう須賀ちゃんたちの姿はなかった。

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