おやすみ、先輩。また明日

自覚した途端、肩の触れ合うこの距離に緊張してしまって。

わたしは口を閉じ、ぴしりと足を揃えて固まり動けなくなった。



ほんの少し薫る煙草の匂いにキュンとくる。

先輩の息づかいに、鼓膜が敏感に反応する。


何もしていないのに、自分の気持ちを自覚しただけで顔に熱が集まっていくのを感じた。


困った、どうしよう。

彼女がいる人なのに。


報われないとはじめからわかっていたのに、どうしてわたしは。



「ほんとバカ……」


「なんか言ったか?」


「いいえ! なんでもないです!」



軍隊ばりのきっちりとした返事をして、わたしは不自然にならないよう気をつけながら笑顔を作った。



本日より、わたしの不毛で一方通行な恋がスタートしたようです。











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