強迫性狂愛

――…


夏休みが明日に迫った今日は、終業式。

特別科の私達は、全校集会にはほとんど参加しない。

けれど、終業式などは絶対参加のようで、前を歩く海斗から「だるい」と愚痴が何度も聞こえた。


「ねぇ、海斗うるさいよ」

「…うるせぇな。だるいもんはだるいんだよ」

「……」


本気でだるそうに歩く海斗に顔をゆがめてから、隣を歩く迅を見据えた。

迅はいつも私の手を握って歩く。

最初は恥ずかしくて、周りの視線が気になっていたけれど、今ではそれが当たり前になってしまっている自分の感情にたまに、びっくりする。

握った手に少しだけ力を込めて、迅の温もりを確かめる。



……すき


…嫌いじゃない


この気持ちを天秤に掛けたなら、どっちに傾くんだろう。


嫌いだとか、憎いなんて気持はとうに無くなってしまっていた。


ねぇ…お母さん。


私、迅のこと――…



好きになってしまいそう。

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