強迫性狂愛
「………」


視界にさえ入れたくなくて、サッと視線をお母さんの腕の中に戻した。


「ほら、百花。行かなくちゃ」

「やだ!!」

「百花」

「やだ!やだ!やだもん!ぜった…やだぁぁ!」


無理矢理腕を離されて、お母さんの腕の中から離れていく。


どんどん離れていくお母さんが、笑顔で見送ってくれる。

その瞳には、私にもわかるくらい涙が浮かんでいて…。


「お母さんっ!!」


そう叫んだ途端に、私の腕を引っ張っていた男の足が止まった。


「…宮原さん。約束は必ず守ります」

「はい。百花をよろしくお願いしますね」


2人のやりとりを、呆然と見つめていた。

これで…最後だって言うの?

お母さんに、二度と会えないの?お父さんは?


――……


本当に最後なら、笑わなきゃ…。


「おかぁ…さん」

「百花」


最後くらい、笑顔で―…

涙を堪えたまま、今できる精一杯の笑顔をお母さんに向けて車に乗り込んだ。
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