強迫性狂愛
第10章

零れ落ちた涙

通り過ぎていく車のライトが、ひどく眩しくて、思わず顔を背けて歩いた。


どのくらい歩いたら、迅のいる場所に行けるのかと思えば、思っていたよりもあっけなくその場所に辿りついた。



「――…っ、寒い…」



ガタガタと、どこからともなく震えてくる体を自分で抱きしめながら、黒澤家の玄関の扉を開いた。


裏門なら、いつでも開いている。



「…ワンちゃんたち…ただいま」



黒澤家の門番がそこにいつも控えているから。


恐い顔をしているように思えたこの子たちも、今ではとても大好きな存在に変わりつつあった。
< 499 / 745 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop