強迫性狂愛
誰もいなくなった廊下を、静かに冷たい風が吹き抜ける。


この静寂をやぶったのは―…



「お前がおろさせたのか」


「あぁ?」


「お前が、百花をそそのかしたんだろう?」


「なんのことだ…?」


「…百花が入院したはず病院の手続きが十河の名前でしてあったからな」


「………」


「お前が…」


「俺のせいって百花が言ったのか?」


「―…なに?」


「百花が、俺のせいでおろしたって言ってたのか?」



真っ直ぐに俺を見つめてくる十河に、一瞬戸惑った。



「いや、そんなことは…」


「…そっか、」



そう言って、一旦自分の足元に視線をやってから、十河は俺のことを静かに見据えた。
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