饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「あまりに姫君が嫌がるので、私に『神託だ』として姫を説得して欲しいと。神など信じていないが、姫は純粋だから、そう言われれば折れるだろうと言って、金まで積まれましたよ。上手くいった暁には、定期的に布施もすると。もちろん断りましたよ。あのような者の布施など、どこから出た金かもわかりませんし、何より姫君が可哀相ですからね。神を馬鹿にするのも許せません」

 最後の言葉に、ぽりぽりと虎邪は頬を掻いた。
 この川の竜神は認めるが、基本的に、虎邪も神は信じていない。
 今のように、この目で見ない限りは、信じられないのだ。

「・・・・・・奴はそこまで、神明姫のことを好いていたのですか?」

 さりげなく、虎邪は話題を逸らせた。

「姫君を好いていた・・・・・・というよりは、『長の娘』が欲しかったのでしょうな。この町も手中にしたがっていたのなら、長の娘と姻戚関係を結べば手っ取り早いわけで。もしかしたら、あ奴、姫を手に入れた後、長を殺す予定だったのかもしれませぬ」
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