饅頭(マントウ)~竜神の贄~
 ぶる、と老神官は身体を震わす。
 虎邪は、ひょいと神明姫を抱き上げた。

「とんでもない野郎ですな。まだ俺のような見目良い若者だったらともかく、あんな中年のデブなんざ。強欲だし、頭も悪いし、良いとこねぇな」

 しれっと自分を褒めるところといい、かなりの暴言といい、老神官は呆気に取られて虎邪を見る。

「とにかく、そうだな。水害に関する儀式は行ったわけだし、後は川上で、公にこの町の平和を願いましょうか。害成す輩に、天罰をってね」

 にやり、と笑う虎邪に、老神官は、思わずぞっとした。
 が、次の瞬間には、にこりと爽やかに笑って、虎邪は老神官を促す。

 神明姫を抱いて自分の馬に乗り、緑柱の馬に老神官も乗せて、四人は森を後にした。
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