饅頭(マントウ)~竜神の贄~
 自分の声も響いて辛い。
 頭を抱えたまま、神明姫は枕に顔を埋めた。
 しばらくしてから、注意して、小声で口を開く。

「・・・・・・私、どうしたの?」

 確か自分は生け贄に選ばれたはずだ。
 もうここへ戻ってくることなど、ないはずなのに。

「昨日の夜遅く、神官様が姫様を連れて帰ってきたのですよ。祭事はちゃんと執り行った。ここの神は、うら若き乙女を生け贄に差し出させるような神様じゃない、と仰ってました」

 露の説明に、あの虎邪(フーシェ)なら言いそうだ、と思いつつ、神明姫は、ふぅ、と一つ息をついた。
 夕べの記憶が戻ってくる。

---そうだ、この頭痛は、二日酔いだわ---

 あんな強い酒を、一気飲みしたのだ。
 中毒にならなかっただけでも、有り難い。

 そうは思うが、この頭痛も半端ない。
 眉をしかめながら、神明姫は目だけで部屋の中を見回した。
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