饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「姫、そんな必死で俺の元へと馳せ参じてくれなくても。これが終われば、ちゃんと俺は姫の元へと戻りますよ」

 きらきらと、虎邪が言う。
 己の身を案じて駆けつけてきたと、露ほども疑っていないあたり、どんだけ自分中心に物事を考えているのか。
 幸いにして、今は姫の心にいるのは緑柱ではなく虎邪なのでいいのだが。

「そうだ。おい緑柱。姫と一緒に、馬車で森まで来てくれ。神官様も、良ければどうぞ」

 そう言うと、虎邪はいきなり地を蹴った。
 水の竜の頭部に飛び乗る。

 虎邪が乗るのを待っていたかのように、竜はそのまま、凄い勢いで川を下りだした。

「俺は竜神と共に、野郎を成敗してくるぜぇ! その後森から帰るのはしんどいから、迎えに来てくれよなーっ!」

 大きく手を振って、みるみる小さくなる虎邪を見送り、緑柱は、ふぅ、と息をついた。

「楽しそうだなぁ~。じゃ、行きますか」

 のんびりと、緑柱がその場にへたり込んだままの神明姫を助け起こし、馬車に乗り込んだ。
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