饅頭(マントウ)~竜神の贄~
終章
「虎邪(フーシェ)~~。もう、いつになったらここから解放されるんだよぅ」

 長の離れの寝台の上で、枕に額を付けて唸っている虎邪に、緑柱(リュイジュ)がぼやく。

「ううう・・・・・・。でかい声出すんじゃねぇ。響くだろうが」

 枕に額を付けたまま、虎邪は眉間に皺を刻んで応えた。
 が、声を出した途端、ぎゃ、と小さく叫んで、さらに深く枕に顔を埋める。

「自分の声も~~響いてきつい~~~」

 虎邪の声とは思えない、消え入りそうな声で泣き言を言う。

 あの森での一件から、すでに数日経っている。
 その間ずっと、長の家では宴三昧だったのだ。

 長からしたら、娘は生きて戻ったし、町の者が苦労して集めた神殿への供物も盗まれなくなったし、町自体を奪われる危機も脱した。
 水害も今後、そう起こらないだろう。

 ということで、良いこと尽くしなのだ。

 虎邪や緑柱に加えて、老神官まで交え、連日連夜、宴で浮かれている。
 昼といわず夜といわず宴にかり出されるので、最早何日酔いなのかもわからない。
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