饅頭(マントウ)~竜神の贄~
第二章
「おーい、虎邪(フーシェ)。そう先々行くなよ」

「とろいぞ、緑柱(リュイジュ)。もう目的地はそこだ」

 肩に荷物を担いで、男が二人、町を目指している。
 二人とも、まだ若い。

 しかし旅人というには、身なりもそう悪くなく、方々を渡り歩いているにしては華奢だ。

 この時代、旅は常に危険と隣り合わせだ。
 追いはぎに遭うことなど、ザラである。
 彼らも一応、腰に剣は差しているが。

「おー。あれが水竜(ショイロン)の町かぁ」

 先に歩いていた虎邪が、丘に駆け上がって手を翳した。

「小さい町だな」

 後から緑柱も追いつく。

「町というより、村だなぁ。うん、こんなところに目的の姫君がいるのか・・・・・・。というより、こんなところだからこそ、いるのかな」

 ふふふ、と顎を撫でつつ言う虎邪は、中央都市から来た神官だ。
 緑柱はその側近とも言うべき、側仕え。

 だが、昔ながらの付き合い故、お互い遠慮などない関係なので、無二の親友とも言うべき存在なのだった。
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