饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「そのかたに会ったとしても、よ。わかんないわよ。顔が、わかんないもの」

「? いつも見ているのでしょう?」

 疑問符の浮かぶ露に、神明は、はあぁ、と特大のため息をついた。

「何故か、いつもお顔、見えないの。ぼんやりしててさ」

「ええええ~~? そうなんですかぁ?」

 心底残念そうに、露が言う。
 ここが夢ならでは、とでも言おうか。
 何度も見る夢なのに、あんなに『会いたかった』人なのに、肝心の顔が見えないのだ。

「・・・・・・とんでもなく不細工だったら、どうします?」

「・・・・・・」

 眉間に皺を刻んだ神明だったが、ぴょん、と寝台から飛び降りると、ばさ、と夜着を脱いだ。

「そうだとしても! 私は好きなんだもの! いいわよ」

「・・・・・・私は悲しいですわ。このお可愛らしい姫様の相手が、とんでもなく不細工だなんて」

 どうやら露の中では、神明の夢の相手は不細工、と決まってしまったようだ。
 何か反論してやろうかと思ったが、何となく面倒臭くなり、また、不細工でないとも断言できないので、神明はそのまま、露から着替えを受け取った。
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