饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「皆様、そう悲しまないでください。私は竜神の花嫁になるのですよ。誇りに思ってくださいね」

 にこりと皆に笑いかけ、神明姫は強い果実酒を飲み干した。
 カッと全身が熱くなる。
 気が遠くなりそうだが、そうでもしないとやっていられない。
 皆の手前、明るく振る舞っているが、本当は恐怖で今にも泣き出しそうだ。

 ぼんやりと、神明姫は室内を見渡した。

---虎邪(フーシェ)様・・・・・・。まだ帰ってらっしゃらないのね・・・・・・---

 こんなときこそ、傍にいて欲しいのに、と思い、神明姫は不意に、ふふっと笑った。
 すっかり緑柱(リュイジュ)よりも、虎邪が気になっている。
 素直に傍にいて欲しいと思ってしまった自分に、神明姫は何だかおかしくなった。

---あんな軽い人、好きじゃないはずだったのに。結局私も、ああいう甘い言葉をぽんぽん言われたら、簡単に落ちちゃうのね---
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