饅頭(マントウ)~竜神の贄~
第九章
 日が昇り、その日が傾いても、屋敷に虎邪(フーシェ)と緑柱(リュイジュ)の姿はなかった。
 神明(シェンミン)姫は衣装を整え、神殿の迎えを待っていた。

「姫様・・・・・・。何で、何故このようなことに・・・・・・」

 昨日から、露(ルウ)はずっとこの調子だ。

「いい加減に泣きやんでよ。露がそんなんじゃ、私も安心して竜神の元に行けないわ」

 神明姫が言うと、露は、がばっと顔を上げた。

「だったら! わたくし、ずっと泣いております! そしたら姫様は、わたくしが心配で、儀式に臨めないでしょう?」

「何言ってるのよ・・・・・・」

 困ったように言う神明姫は、ちら、と離れのほうに目を向けた。
 相変わらず、離れに灯は入っていない。
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