地下世界の謀略
圧迫感が月を襲う。
容赦無く締め付けられる喉からひゅっと掠れた息遣いが漏れた。
殺意は向けられていないというのに、彼の目だけは、本気だった。
「月ちゃんは可愛くて攫っちゃいたいくらい無垢だけど、なんだろう。ちょっと邪魔なのかも…」
「……っく、ぅ」
「あ、俺にとって邪魔なわけじゃないよ?"仕事"のとき、邪魔なだけで」
戸惑いも躊躇も見えない、彼の言葉は明らかな凶器。
苦しめられる呼吸器官と比例して意識すらも朧げになっていく。
幸いなことに子供達は私達の今の状況に気付いていない、あの子達が被害に合うことはないだろう。
(嗚呼、でも)
この世界の邪魔者は、私だけだった。
「何してる、始末屋」
意識が飛ぶかと思われたその時、地を這うような低い声が耳についた。
それは間違いなく本堂にいたはずのアルトの声で、アルトの睨みに喉元にあった眞田の手も緩む。
「……っ」
ずるりと重力に従って崩れ落ちた身体は、無惨にも地面に叩きつけられた。その痛みよりも苦しさから解放された肺に、急激に酸素が取りこまれたため、呼吸を行う方がずっと痛かった。