地下世界の謀略
苦しげに咳き込む月を見たアルトは懐から銃口を取り出し、月に銃を突きつけた時のように、眞田の後頭部にそれをねじ当てた。
ごり、と音がする程強く押し付けられた銃に眞田は吹き出した。
「っははは!やだなあ、本気になっちゃって!」
「面白いこと言うんだな、本気だったのはお前だろ」
アルトは片腕で倒れこむ月を抱き上げると、彼女の首元を引っ張りそこにくっきりと残る痣を見せつけた。
「なあ、眞田。これ、本気じゃなくてなんて言うんだよ」
眞田は動じない。そんなこと気にもしていないように、ただ真っ直ぐアルトだけを見つめていた。
「アルト、俺。始末屋だよ?」
「……まさかお前、」
「いや?荊には雇われてないよ。別の人」
無邪気に嗤うその姿が邪なものに見えるのは私だけだろうか。まだ霞む視界の先で、彼はアルトを賤しむようにニヒルに嗤っている。
(瞳に哀すら浮かべずにいる、悪魔のように)
「俺に依頼をしたのは、君達の最も忌むべき人物だよ」
「…………は?」
それは、アルトにだけ向けられた言葉ではなく。
始末屋の彼は、間違いなく私をも指差していた。
───その意味を聞き出そうとしたその時、すぐ近くで閃光が奔った。
(舞った爆風の中、耳を劈くような子供の悲鳴が聞こえた)