地下世界の謀略
そんな自分勝手な思考を巡らす自分を、彼女が聞いたらきっと軽蔑するだろう。
いや、それよりも昨日の今日である。
また彼女に精神的な圧力をかけるようなことを言ってしまえば彼女の心は壊れる。
もはや自分でも、気まぐれで拾った、だなんて思えない。
「…よく自分でもわかんねえけど、放っておけなかった。生きたがってたから、他人事に思えなかった、」
「アルト…」
(ああ、くそ)
うまく言葉にできない。
「……っ俺はそういうのに弱いんだよ。アンタみたいな臆病者の無知な餓鬼みてえなの見てると、放っておけないっていうか…っ」
今はまだ、自分でも理由なんか明確ではない。だがきっと彼女に言ったように、俺は存外世話焼きなのだ、つまりは。
「だから、っあん時みたいにハラハラさせるようなことすんな。……あと、悪かったよ突き放すようなことしてっ」
俺の目の届く範囲にいろ馬鹿。
むず痒そうに、しかし一気に捲し立て言葉を紡ぐアルトの言葉を一通り聞き、月は時間差で吹き出した。