地下世界の謀略
「眞田は始末屋だからね、いくら彼個人がアルトと知人だったとしても、彼は仕事を優先する…彼はそういう男だ」
場所を変えて、リビング。
体調が万全ではない月も状況を把握しようと、アルトに連れられまた三人で話し合うことになった。
今度は追い出されなかったことに安心しながら、理貴が語った眞田の職業に月は顔をしかめた。
「…あの時アルトも言ってたよね。始末屋って、やっぱり人を殺すの?」
「当たり前だろ。始末屋と聞いて害虫でも殺してくれる便利屋とでも思ったのか」
「…アルト、言い方。つまりね、始末屋の眞田は誰かに依頼されて君に危害を加えようとしたってことは確かだね」
(もしくは、私以外の此処にいる誰かに)
───依頼主は私達の最も忌むべき存在。
アルトがいたとしても、私にはこの地下世界の知り合いは知らない。よって、彼の言ったことの辻褄は合わないことになる。
先程初めて理貴さんが信頼できる"元"情報屋だと知ったが、やはり経験からなのか、彼の話のまとめ方はこの上なく分かりやすかった。
アルトは考えるような仕草をして、理貴さんの話を噛み締めているようだった。
「…眞田さんが言ってました、私という存在は仕事上邪魔だって」
「それも考えると、何も始末屋の仕事は月さんだけが目的ってわけじゃなさそうだね」
「……とすると、狙いは俺かもな」
アルトの見解に反射的に月は否定する。
「まだ分からないでしょ」
「そうだねえ。何も、恨み辛みが君にだけに向いてるわけじゃない。情報屋を営んでいた私狙いだって可能性もある」
理貴さんの自然なフォローに納得する点もあったのか、アルトは渋々頷く。
考えても、謎は増えるばかりだった。