ポチタマ事件簿① ― 都会のツバメ ―

 地面には茶色っぽい筒状の物体がいくつか転がっている。
 空っぽの植木鉢だろう。

「まったく、あの鉢だって管理費で買っているんだろうに。……あれ?」

 植木鉢のうち、ひとつだけ、少し形が異なっている。
 ライトの角度が悪いせいか、薄暗いので、はっきりとは見えない。
 丸みが似ているが、あれは……。
 植木鉢ではなく、茶色の革靴――か?
 靴のかかとの曲線が、遠目に見ると、植木鉢のそれと似ているのである。

「……なんであんなところに?」

 男は目を凝らした。
 転がる革靴。
 そこから伸びる黒い影。
 いや、黒いソックス。
 それだけではない。
 中身――黒いソックスに包まれた人間の足首が伸びている。
 黒いソックスは血でどす黒く染まっていた。

「あ……きゅ、救急車! 救急車ぁ!!」



(プロローグ 完)
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