愛シテアゲル


 とろっとしたフローズンをひとくち。
 口の中に、小鳥が大好きなベリーの香りが広がる。
 そして二宮のレモン、初めて味わう香り高いリキュールの甘みと苦み。
 そっと飲み込むと、喉と胸にぽっと熱いものがともる。

 これがお酒の味、身体がお酒を知るとこうなるの。
 まるで……。お兄ちゃんが好きで、好きで、たまらないって。あの狂おしい気持ちになった時と似ている?

「お酒て、恋するみたい」

 ふと思ったことを呟いたのに、伊賀上のおじいちゃんが驚いた顔をした。

「……小鳥。ほんとうに大人になったんだね。女としても幸せになりなさい」

 恋を知らなければ、そんな言葉は出てこない。そうは言わなかったけれど、おじいちゃんの目が優しくそう小鳥に言っているようだった。

「おいしい。気に入ったよ、おじいちゃん。おじいちゃんの苺シリーズはどれも最高」

 もの心つく前は、イチゴミルク。小さな女の子だった時は、蜂蜜漬け苺の紅茶。大人になった女の子には、フローズンベリーのカクテル。情熱的な赤色。元気になりたくなる苺色。小鳥はそっと目をつむって、おじいちゃんがいつもプレゼントしてくれた苺を味わう。

 こうして私はこのおじいさんに大事にしてもらってきた。そして私はこの味をいつか……。



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