愛シテアゲル

12.アイ、あい……、愛?(1)



 海辺を離れ、翔が運転するMR2は静かな民家町の車道へと入る。

 お遍路さんがお参りする八十八カ所札所のお寺がいくつかある寺町。
 古くて狭い車道ばかり。街から離れた古い町。信号も少ないけれど、そのぶん、人が歩いていたり信号なしの横断歩道を渡ることもあるので慎重に走らなくてはならない道。

 そこをMR2は、うしろのランサーエボリューションの影を感じながら、ダム湖へ向かう。

「お兄ちゃん、後ろに来たよ」

 ライトを点けた白い車が見えると、翔がハンドルを切って細かい道をすぐに曲がってしまう。

「たぶん、俺の方が道を知っている」

 妙に断定的に呟く落ち着きに、小鳥は首を傾げる。

 なんだかお兄ちゃん。もうランエボのドライバーが誰か判っているみたい? そう思うほど、落ち着いている。

 ステアリングを回しながら、翔の目は鋭くフロントミラーを何度も確認している。

 だけれどとても冷静。慌てた無茶なスピードも出さず、信号無視もせず。まるで後ろにやってくるランエボとの車間距離や追いつかれるスピードも計算し尽くされているかのように。



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