愛シテアゲル


 龍星轟に到着して、翔がいつもの場所にスープラを駐車した。
 それと当時に、龍星轟に白いスポーツカーが入ってきた。

「あれ、聖児だよな」
「ほんとだ。スミレちゃんも」

 事務所正面に、白い車も停車した。
 マツダ RX-7 聖児が選んだ愛車だった。

 高校卒業と同時に免許を取得し、英児父と聖児は『愛車探しの旅』に出かけていった。いくつかネットで探し、候補にした車を現地まで確かめに行って買うという滝田父子らしい旅だった。

 聖児の希望と、英児父の眼鏡にもかなって、龍星轟にやってきたのが『マツダ RX-7 三代目』だった。

 聖児も自動車大学校を卒業して、小鳥と同時に社会人に。昨春から龍星轟で従業員として働いている。

 その聖児が、龍星轟のジャケット姿でスミレと事務所に入っていくのが見えた。

「聖児も今日は休暇だから、スミレちゃんを連れてきたんだろう。また二階の自宅で夕飯でも一緒にするんじゃないか」

 スミレが龍星轟に遊びに来るのはもう当たり前で、小鳥を訪ねてきているのか、聖児を訪ねてきているのか、もうどっちでも良いというくらい、彼女が来たら両親もなんなく二階の自宅に迎え入れていた。

「そうだね」

 でもだったら、事務所に入っていくのは、小鳥にとってはなんだか違和感だった。



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