女王の密戯
「ええ、そうですね。そのときは是非」

茶田はわざとらしく目を細めて言う。その隣ではまだ三浦が驚いたような表情を崩さずにいた。

「個人的にお付き合いがある方とかあまりいないということですかね」

茶田は軽く背筋を伸ばし、質問を変えた。

「そうですね。友人もいないですし、この業界にも特に親しいと呼べる人物はいませんね」

きらびやかな世界に住んでいるにも関わらず寂しい生活を送っているのか。それとも、好んで人付き合いをしないのか。

「こんな仕事ですから、長年誰かと付き合う、というのは難しいんですよ」

茶田の考えていることに気付いたのか紅華は少し寂しそうな表情を覗かせながらそう言った。だがそれが嘘であることは一目瞭然だ。

そんなことを言ったら、芸能界にいる人間は皆、親しい者がいないということになる。それは有り得ない、と思うのは現場内で楽しそうに会話をしている者達を見るからだ。それを見る限り、必ずしも親しい人間を作れないわけではないと感じるのだ。

恐らく紅華は親しい人間を作りたくないだけではないか。
茶田は漠然と感じながら紅華の美しい顔を見た。

よく見れば目尻などに細かい皺が微かにだが刻まれ、それは彼女がもう若くはないことを物語っているように思えた。それでも彼女は存分に美しく、この業界に君臨する女王なのだ。

そんな彼女が一人を好む意味とは。
茶田は紅華の茶色い瞳を覗き込むかのように見詰めた。



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