瞳の向こうへ
【翔side】


昼休み、俺は一人の時間を大切にする。


やんちゃしてた頃はそんなことこれっぽっちも思わなかった。


大勢で遊んで。


たくさんの友達としゃべり続けて。


可愛い女の子ともいっぱい遊んで。


充実してたと言えばしていた。


そんな俺が今は一人部屋にとじ込もって学校カウンセラーの先生とおしゃべりしてますよ。


『まあ、お疲れ様かな』


先生の覚えたての手話を見てどこか懐かしさを感じる。


『疲れました』


さすがに初日は回りの反応が気になってしょうがない。


教室行くまでの半端ない緊張感。


教室入ってもみんな何て言ってるか気になる。


音のない世界は本当に孤独感が強くなる。


『あなたのクラスは理解者もいるから大丈夫よ』


『うーん。どうですかねえ』


転校してきた新しいクラス。


可愛い女の子は当然いる。


会って即出来た男友達もいた。


その男友達の中にぎこちないが、手話が出来る奴がいた。


運がいいのか悪いのか。


まあ、一人ぼっちになるよりはマシなのか。


『みんないい子だから。だけど、手話はなかなかね』


『別にいいっすよ。俺が努力さえすればどうにか』


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