瞳の向こうへ
ちょっと投げやりな言い方になってしまった。


そんなに甘やかされて学校生活を過ごすのも。


これが手話でよかった。


『部屋電気つけても暗いからカーテン開けようか』


先生が一人言のようにつぶやいてクリーム色の遮光カーテンを一気に開けた。


眩しい太陽の光が俺を容赦なく照らす。


『明日全校生徒の前で自己紹介なんだよね?』


『そんなことやらなくてもひっそり生きていたいんですけどね』


『まあまあ。明日あなたの手話に応えてくれる子は女子だから』


『女子?』


『わかりやすい〜』


男の本能恐るべし。


いや、そんな想像する男の本能ではない。


拒否反応だよ。


『今日は風邪でお休みみたいだけど、手話はもうこの学校じゃ誰も叶わないわ。』


『へえ〜。凄いですね』


だからどうなんだって感じ。


自然と手話も雑になる。


手話が上手いのには感心するよ。


感心するけど、俺には何の慰めにもならないよ。


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