瞳の向こうへ
この沈黙の時間がズシリと重たい。

「……先生、もういいです。頭上げてください」

素直に頭を上げることができません。

身体中が震えてます。

「先生」

加奈子ちゃんが私の手をぎゅっと握った。

あったかい手だ……。

加奈子ちゃんの生きてる証。

目頭が熱くなってきたよ〜。

必死に涙をこらえました。

「先生、頭上げてください」

我慢出来なくて膝から崩れ落ちた。

加奈子ちゃんを今日初めてまじまじと見つめた。

加奈子ちゃんの瞳も潤んでいた。

「私も謝ります。あれだけ親身になってくれたのに、私が一瞬感情的になったせいで……」

言葉に詰まって何も言えなかった。
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