瞳の向こうへ
年下の女の子に年上の女心が見透かされそうとしてる。

なんとかしてごまかすぞ〜。

『私の恋人は野球です!』

私が本当に困った時に使う方法が手話です。

いざという時に何度もピンチを救ってきたんですよ。

しかし、今までは手話が出来ない相手だったが、加奈子ちゃんは……。

『高校生のピッチャーですよね?』

やっぱり手話で応戦してきましたよ。

さすが本当はライバルになる予定だった相手だ。

「…ダメだね」

「さすが葵さんですね。手話上手すぎますよ!」

本業誉めてくれてまずはよかった。

「恋人は明日開会式なの」

「私行くんですよ!」

「ホントに?」

「はい!退院に向けたリハビリの一環で外泊しようってなって、甲子園の開会式を球場で見たいって言い続けたら叶いました」

「一緒に見よっか!楽しいじゃない」

「嬉しいです!明日はよろしくお願いします!」

女同士の約束を果たしたところで看護師さんが部屋に入ってきた。

これからリハビリだ。

看護師さんと一緒に加奈子ちゃんを車椅子へと移動する作業を手伝った。

いざやってみると重労働だよ。

華奢な私じゃすぐ参ってしまうね。

「葵さん!明日また。それと……」

「それと?」

『光をどうか彼に』

手話で加奈子ちゃんから私に託されました。

頼まれるとやる気が出るよ。

誰にもわからないようによ小声で気合いを入れ、看護師さんに代わって車椅子を押すお手伝いをしたよ。

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