瞳の向こうへ
校長先生へ報告を済ませ、階段を降りた。

少しひんやりした風が校舎内に吹いてる。

秋の訪れはそう遠くないのかもしれない。

私が青春を謳歌した原点の場所に自然と歩みを進めた。

あれ?履き物がある。

しばらく立ち止まって考えたけど、思い当たる人物は彼しかいない。

扉をノックしました。

間を開けて扉を開けると、椅子を窓際に寄せて外の景色を眺めてる男子がいます。

私が部屋に入ってるの知ってるくせに、振り向こうともしない。

いつからこんな技を覚えたんだろう。

しかし、そう簡単に年下の男子に遊ばれる女子大生ではございませんよ。

私も椅子を窓際に寄せてくっつけました。

窓は全開。

淡いブルーの遮光カーテンが勢いよく風になびく。

『お元気そうで何よりです』

『練習は?』

『今休憩中です』

『そう。でも、よく私がここ来るのわかったね』

『教室から先輩が来てるのわかったんでもしやと。テレパシーですよ』

『んなわけないじゃん』

私が否定すると、翔君が私の方に身体を向き直した。

一目でわかりました。

一年前の翔君ではないことを。

過去の悲しみ。

心の怯え。

未来への迷い。

今の翔君はその全てが消え去っているよ。

栄光を手にした力強さと自信がひっかかってたものを取り除いてくれたんだろうね。

『先輩……いや、葵さん。覚えてますか?俺が光の先に届いたらここで会おうって。俺なりに輝く光の先へと進んでいます。でも、全国制覇はしましたけど、俺自身まだ不安があります。まだまだスタートラインだと思ってます。あらためてですけど、よろしくお願いします』


あなたは確実に前へと歩んでいるよ。

大丈夫。自分を強く信じれば。

だけど、一人だと不安だよね。

『……翔君、顔近づけてくれるかな?』

『え?』

『言ったでしょ?私があなたの壁になって光輝いてる場所に向かわせるって。今度は一緒にその場所行こ!』

私の両手が翔君の頬を覆い、お互いの額を合わせた。

お互いの息遣いが聞こえるよ。

『葵さん、あの……』

『これからは私とずっと前へ歩こう。あなたがつらいことや苦しいことがあっても私がいる。だから……あなたが好きです』

『葵さん……。俺も……あなたが大好きです』

一度視線を落とした後の手話での告白。


もう!かわいいんだから。

『よ〜し!しょうがないねえ』

秋の訪れを告げようとしている心地よい風を肌で感じながら私たちは唇をずっとずっと重ね合った。

二人で輝く未来へ歩んで行こうと誓いながら。

みんなが待ってる光の先へ二人で歩んで行こうと誓いながら。
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