瞳の向こうへ
手話合宿やらなくてもたまに出張して教えてるから大丈夫って言ってたけど。


あの子見かけによらず熱狂的ファンだからなあ。


「青柳君はゴールデンウィークどっか行かないの?」


「俺はデートっすよ」


「なんだあちゃんといるじゃなーい」


「男連中とですけどね」


悲しげな笑みを浮かべる。


こういう時に優しく頭を撫でてやれたらって思うけど、年頃の男の子は大抵嫌がるから寸前で抑えてる。


「あ!期待の翔君は?」


「さあ……野球以外のことは手話出来ません」


お手上げ状態ですか。


「じゃあ野球はどう?」


「あいつは凄いっすよ。未だにテレビで話題にならないのが不思議ですよ。受けてて毎日ビビります」


途端に目を輝かせて身振り手振り交えて彼がどれほど凄いか熱弁。


「将来プロは間違いないです。基本に忠実ってのもいいですね。素直で真面目で。ただ……」


「ただ?」


「この間たまたま部室で座ってるとこみたんですけど、なんかあさっての方向をただぼけーっとずっと。ま、彼女と喧嘩したなあってその時はそう思ったんですけど」

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