神隠しの杜
こうなったそもそもの原因を思い起こせば、悔やまずにはいられない。
事の発端は友達との雑談だった。
噂好きの佐上雪芭、信憑性関係なく怪しい本ばかり読んでいる古村隼政――いつも通っていた小さな図書館での出来事だった。
学ランのボタンを三つ開けた雪芭と、ボタン全開の隼政は食い入るように本を読んでいた。
利用するのは主に歩たちだけで他の利用者はほとんどいない。そのせいか、この図書館の司書はひとりだけでほぼ成り立っていた。
中学最後の学年だと言うのに、日常は何の変化もなかった。
それがあたりまえで、一番幸せだって事を、この時は考えもしなかった。次の日はごく自然に、あたりまえにやってくるものなんだと信じて疑わなかった。
誰ひとり。
世にも怪しい噂というタイトルのやたら厚い本を読んでいた隼政が、顔を上げずにこう言った。
「あゆっち、面白い噂あるよ」
“あゆっち”とは、木暮歩の愛称だ。隼政だけがこれで呼んでいて、雪芭は普通に呼び捨てである。
歩はオカルトの話にさほど興味はなく、いつも雪芭だけが目を輝かせて聞いていた。
「俺はべつにいいんだけど……」
木暮歩と言う人間はこのメンバーの中で一番まともで、個性がない。そもそも自分がまともでなければ止める人がいないのだが。
「聞きたい。歩はいいから、聞かせてよ」
「さすがゆっきー。いいぜ話してやる」
意気揚々と話始めた隼政に軽くため息をつき、歩は手元にある家庭菜園の本を続きからまた読み始める。
次にどんな野菜を育てようか考えながら。
二人からしたら地味な趣味らしいが、気にしたことは一度もない。
事の発端は友達との雑談だった。
噂好きの佐上雪芭、信憑性関係なく怪しい本ばかり読んでいる古村隼政――いつも通っていた小さな図書館での出来事だった。
学ランのボタンを三つ開けた雪芭と、ボタン全開の隼政は食い入るように本を読んでいた。
利用するのは主に歩たちだけで他の利用者はほとんどいない。そのせいか、この図書館の司書はひとりだけでほぼ成り立っていた。
中学最後の学年だと言うのに、日常は何の変化もなかった。
それがあたりまえで、一番幸せだって事を、この時は考えもしなかった。次の日はごく自然に、あたりまえにやってくるものなんだと信じて疑わなかった。
誰ひとり。
世にも怪しい噂というタイトルのやたら厚い本を読んでいた隼政が、顔を上げずにこう言った。
「あゆっち、面白い噂あるよ」
“あゆっち”とは、木暮歩の愛称だ。隼政だけがこれで呼んでいて、雪芭は普通に呼び捨てである。
歩はオカルトの話にさほど興味はなく、いつも雪芭だけが目を輝かせて聞いていた。
「俺はべつにいいんだけど……」
木暮歩と言う人間はこのメンバーの中で一番まともで、個性がない。そもそも自分がまともでなければ止める人がいないのだが。
「聞きたい。歩はいいから、聞かせてよ」
「さすがゆっきー。いいぜ話してやる」
意気揚々と話始めた隼政に軽くため息をつき、歩は手元にある家庭菜園の本を続きからまた読み始める。
次にどんな野菜を育てようか考えながら。
二人からしたら地味な趣味らしいが、気にしたことは一度もない。