神隠しの杜
「神隠しについての噂なんだが。神隠しは引き寄せ引き込み、それを神隠しへと変えるって書いてあるんだけど、面白くないか!?」


「なにそれ?」


 神隠しの話題だけで、どうしてここまで盛り上がれるのか歩には、まったく理解できない。


 歩はつい口を挟んでしまった。


「神隠しより、他にやる事あるだろ」


 口に出してからしまったと後悔しても時すでに遅く、二人からうらめしそうに睨まれた。


 なんとなく何を言われるかわかってる歩は、あえて黙った。


 こういう場合嵐が過ぎ去るのを待つしかない。隼政はオカルトが好きすぎて自らオカルトクラブを立ち上げ、しかもその部長。人数は……言うまでもない。


 この時期最高学年は参加できない決まりだが隼政に言い負かされ、泣く泣く先生の方が折れたらしい。



 地雷を踏むと度々暴走するのを、歩はすっかり忘れていた。


こうなったら、手がつけられないという事を。


「そりゃあ、あゆっちは成績がいいし優等生だからだよ! 女子諸君からモテるし、コンビニのお姉様も歩くん歩くんだし。性格問題ありありなのにさあ」

「女たらしだから歩。おまけに無自覚だから余計たちが悪い」


 最後何故か雪芭がうんうんと頷く。しかし、最後どうしても納得できない歩がまた口を挟む。


「女たらしは雪芭だろ、はべらかして歩いてるの見たぞ」

「歩と違って口だけはうまいからね」

「いつもゆっきーの予想外の言動に持ってかれちゃうんだよなぁ」



 いつも通りの展開で物事は締めくくられ、図書館閉館時間の5時よりちょっと前に、ギリギリの退出する。そのため少し視線は痛い。


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