身勝手な恋情【完結】

「えっと……あのですね、」



社長は無言で壁から体を起こし、組んでいた腕をほどき、私へと近づいてくる。

彼の背後から「ゴゴゴゴゴゴゴゴ……」という黒いオーラのようなものを感じて、

「ひっ……!」

と硬直する私。


蛇ににらまれた蛙の気持ちが今わかった、なんてのんきなことを言ってる場合じゃない。


なんとかしてこの場を切り抜けなければ、と焦ったその瞬間

「今朝、男ともめてた」

と、にっこりと微笑む社長。


え……?


「うえええっ!?」


いったいどこで見てたの!?


どっと噴き出す汗。


< 30 / 469 >

この作品をシェア

pagetop