身勝手な恋情【完結】
「えっと……あのですね、」
社長は無言で壁から体を起こし、組んでいた腕をほどき、私へと近づいてくる。
彼の背後から「ゴゴゴゴゴゴゴゴ……」という黒いオーラのようなものを感じて、
「ひっ……!」
と硬直する私。
蛇ににらまれた蛙の気持ちが今わかった、なんてのんきなことを言ってる場合じゃない。
なんとかしてこの場を切り抜けなければ、と焦ったその瞬間
「今朝、男ともめてた」
と、にっこりと微笑む社長。
え……?
「うえええっ!?」
いったいどこで見てたの!?
どっと噴き出す汗。