身勝手な恋情【完結】
「しゃっ……社長っ……」
「俺のこと、よく知ってるんだね」
「え、いや、その、あの……」
彼の平坦な声から感じるかすかな嫌味。
私を見据える冷ややかな三白眼。
「社長が恋なんてありえない」ってやつを聞かれてしまったらしい。
明らかな失敗に、サーッと顔から血の気が引く音がする。
しまった。どうしよう。
たかが下僕に何かを決めつけられるなんて、王様には我慢がならないに決まっている。
だから即座に謝らなくちゃいけないんだけど――
彼への「言い訳」が思いつかない。