身勝手な恋情【完結】
にやける頬を両手で押さえながら、事務所の中に入って蓮さんが作業している社長室へと向かう。
軽くノックしてからドアを開けた。
「櫻です……蓮さん?」
「――」
返事はなかった。
どうやら蓮さんは私の声にも、ドアが開いたことにも気づいていない。
部屋の奥で、デスクの上に設計図やミニチュア、さらに布地をたくさんを広げ、デスクに手を突き、厳しい表情でそれらを見下ろしている。
茶色のセルフレームの奥の瞳の三白眼は熱っぽく輝いていて、普段の彼の、冷ややかな美貌からは遠く、まるで違う人のように見えた。
素敵だな……。
その真剣な横顔に胸の奥が甘くうずく。
こういう蓮さんを黙って一方的に眺めるの、久しぶりかも……。