身勝手な恋情【完結】

「で、夢は叶いましたか?」



私の問いかけに、立花さんはただ微笑むだけで「イエス」とも「ノー」とも答えなかった。


そして端正な佇まいでコーヒーを飲み終えたあと、

「実は来週から日本を離れるんだ」

私と草介さんに突然の別れを告げる立花さん。



「え、そうなんですか? 残念です。もっといろんな話をしたかったです。私、いろんなことにとても迷っていて……」



蓮さんのこと

自分のこと

仕事のこと――


人生の先輩と気軽に言うには、とても手の届かない人だと思っていたけれど、私は心の中で勝手に立花さんのことを「師匠」だと思っていたのに……。



「自分の未来は自分が作るものだよ。結果は自分の鏡だ。そのことを忘れなければ、たいていのことはなんとかなるよ。頑張って」



そして彼は軽やかに「ごちそうさま。また春に」と、出ていってしまった。




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