Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
―ケインSIDE―

 一四三〇年八月三十一日。午前十一時。

 ケインはエディンバラ城の中庭を歩いていた。短く刈られた芝生を踏んだ。柔らかい草が、ケインの足で横に倒れていく。

 青い空に、濃い緑の葉が溶け込んでいた。

 ケインの隣に並んで歩いていたのはダグラスだった。ジョーンの接見を終えたダグラスに声を掛けたのだった。

 ケインがダグラスを誘った理由は、ただ一つ。

 レティアの暗殺をジョーンから命令されたかどうか。レティアが殺された後に、ダグラス家の馬車が通り過ぎたという目撃証言があった。

 報告を聞いたとき、胸が締め付けられた。何か嫌な予感がしたのだ。ケインはすぐにダグラスが暗殺に関係しているのではないかと考えた。

 ダグラスが自分勝手にレティアを暗殺するとは思えない。

 ジョーンに命令されたか、ジョーンへの点数稼ぎにやったのだと推測できる。

 後者なら構わない。もし前者なら、ジョーンの選択が間違っている。今後、同じ過ちを犯す前に、ジョーンに伝える必要があると思った。

 二ヶ月半前の出来事を思い出して、ケインは中庭を歩いていた。ケインの視線の先には三本の木がある。
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