Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 ロバート・グレイアムはスコットランドの貴族で、議員だった。

 ジェイムズと度々、意見の食い違いがあったらしい。ケインが実際に目にしたわけではないから、議会の模様は知らない。

 ジョーンの接見に来た人の話や、エレノアやローラの噂話くらいしか耳にしていないから、事実とは異なる内容で脳にインプットされている場合もある。

 レティアが亡くなってすぐにジェイムズが出した政策に、ロバートが反対意見を述べたのを最後に逮捕されたと、ケインは聞いていた。

「確かに、逃走中なのは事実です。でも、ロバートは無実の罪を着せられました。最近の国王陛下に、腹を立てている者が多いのは知っておられますか? そろそろ良い時期だと思うんですけどね」

 ダグラスが、ケインの肩を叩いた。

 ケインはダグラスの横顔を見た。ダグラスも、ケインの顔を見る。

(反ジェイムズ派を作ると? 国王派と戦争をするつもりか?)

 ケインは大きく息を吐いた。折り入って話したい内容とは、ロバートたちを紹介して、反乱軍を立ち上げる話をしたかった。

 ケインが「帰ってくれ」と口を開こうとするよりも先に、ダグラスの唇が動いた。

「国王陛下が亡くなれば、ケイン殿は堂々と王妃陛下と愛を育めますよ」

 耳元で囁くダグラスの声が湿っているように感じ、寒気が走った。ケインはダグラスから二歩ほど距離を開けて立った。冷たい雨がケインの顔を直撃する。

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